夏の終りにちょっとゾクッとする話(そうでもない)

August30 [Wed], 2006, 13:58

関東の地元でちょっと奥に入ったところに、知る人ぞ知る、うなぎと焼き鳥の名店があるらしい。
その名も「うなぎ『鳥よし』」
お盆も営業中、とのチラシが入っていたので、さっそく車で探索に出かけた。

チラシには、嫌がらせのような、細かく見辛い手書き地図が載っている。

大きな沼に沿ってしばらく走り、
古い首塚伝説ゆかりの、神社の角を曲がる。
お寺を過ぎると墓地にぶつかる。
その墓地の間の砂利道を通り抜け、
突き当たりにその店はある、と書いてある。

沼沿いの細い道は真っ暗だ。
対向車もなく、しばらく走ってから、どうやら行き過ぎた、とUターン。

たしか墓地を通って突き当たりだよ、と沼のほとりにある大きな霊園の看板のところで脇道に入ってみる。
しーんと静まり返った墓地の真ん中を、のろのろと進む。
草いきれの匂いがする生ぬるい風が吹いている。

やがてたどり着いた突き当たり。
店どころか灯りひとつなく、あるのはただ無数のお墓だけ。

…違ったらしい。慌ててUターン。

延々道に迷い、見当違いの場所に出ては戻り、
やっと伝説の神社を見つける。
次はお寺。あった。
突き当たりには墓地、砂利道。地図どおり。

がたごととお墓の間の砂利道を行き、
行き止まったところは木が生い茂っていて、これ以上は進めそうにない。
着いたのか・・?  
しかし、周囲は真っ暗で、店らしき建物など見えやしない。

「木曜定休日」とペンキで書かれた木の板が目に入るが、他に看板も見当たらず。
暗くて危うく溝にタイヤが落ちそうな、狭い行き止まりの袋小路である。

車の窓を開けると、うなぎの焼ける美味しそうな匂いがした!
たぶんすぐ近くまで来ているはず…

でも、店どころか、人の気配すら感じられないぞ

この先の暗がりからは、物音ひとつしてこない。
ただうなぎのいい匂いだけがずっと漂っている。
ここからは、車を降りて歩いて進むべきだろうか?

ふと我に返り、周囲を見回す。
なにゆえお盆の夜に、墓地のすぐ横で。

匂いはすれども姿は見えぬ、うなぎ屋を探し求めているのか?
道に迷いすぎてラストオーダーの時間とうに過ぎてるし。

・・なんだかどうにも怖くなってきた。

やめやめー!
何度も切り返しつつUターンして、その場から逃げるように去る。
月明かりに、ふと宮沢賢治の童話を思い出す。注文の多い料理店。
がたがたがた。ぶるぶるぶる

果たしてうなぎ「鳥よし」は実在するのか?

そもそも、うなぎと言いながら名前は『鳥よし』とはいかがなものか?

次号、決死の(そうでもない)潜入レポへ続く!

夏の終りの実はほのぼの…だったうなぎやの話

August31 [Thu], 2006, 18:15

前回、恐怖の夜の探索

から数日。
おいしいうなぎと焼き鳥があきらめきれない我々は、今度こそはと、明るい昼間に「うなぎ『鳥善』」の探索を続けていた。

沼沿いの細い道。
首塚伝説の神社。
お寺を過ぎると墓地。
墓地の横の砂利道を、まっすぐ突き当たる。

やっぱり同じ…?

あったー!!Σ( ̄口 ̄;(あっさり) 

・・こないだの場所で合ってた。。。_| ̄|◯
ちょうど店の真裏まで、たどり着いていたらしい。

前回、暗がりの中であわあわと

必死にUターンした袋小路の横、
ちょうど影になっていて、わかりにくい位置に、ひっそりとあったのだ。
店の前へと続く木の階段が。

暗すぎて気づかないっちゅーの!!

そして、行き止まりだと思っていた道は、明るいところで見ると、その先の敷地に続いているではないか!
意を決して車を乗り入れ、裏に回ってみると大きな古い民家が。
障子がぴしゃりと閉まった縁側からは、中の様子はほとんど見えない。

そりゃ店だってわからねっちゅーの!!

・・ぜえはあ

(血圧上昇)
これは知っている人以外は絶対!気づかないであろう。

ちなみに、曲がり角に看板くらい出しといてよ、ぶつぶつ…と散々迷ったときにゆっとりましたが、ありました

風雨にさらされ、灰色に変色した、細く小さな板に、
色の薄ーくなった墨で「うなぎ 鳥善 →」とひっそり書いてある、
世界一目立たない看板が。

こんなん夜に見えるかー!

しかし、なまじ夜に見つけてたら、さぞ恐怖を煽ったことと思われる。
立ってたの墓地の角だし~

おそるおそる店の入り口へ。
頑丈そうな木の引き戸の前には「こちらでお履き物をお脱ぎください」と書かれた紙が貼ってある。
(まさに宮沢賢治の世界^^;)
靴を脱ぎ、扉を開けてすぐの木の階段をこわごわ降りて、中に入る。

古い民家を改装した店内。
木材を大胆に組み合わせた天井、古い錠前や道具などを生かした内装は手造りだろうか。
天井には眼光鋭いフクロウが鎮座し(木彫り)
火は入っていなかったが、囲炉裏もある。

席は、畳に重くがっしりした大きめの座卓が5つ、6つあるだけ。
お客さんは法事の集団と、ヒマそうなお坊さん?と、ヒマそうな農家の人?とヒマそうな近所の人?と我々、の5組。
以上で満席である。

ここが知る人ぞ知る、噂のうなぎ「鳥善」。
夜に来た時のおどろおどろしい雰囲気と違って、
昼間は一転、どことなく懐かしさあふれる、ほのぼの~とした空気。

つか、いわゆる地元の憩いの場・・?

店の名前→正しくは「とりぜん」と読むそうです。
元々は焼き鳥やさんだったから、うなぎ『とりぜん』なの?

洗面所で手を洗ったら、ひんやり冷たい

井戸水だった。
まだ井戸水の地域が残ってたことにちょっと驚いた。

ランチタイム10食限定・特製弁当を頼む。
来るまでは30分、木組みの天井や彫刻など、ちょっと物珍しい店内をきょろきょろ眺めながら、のんびりと待つ。

お造り(まぐろ、かんぱち、水ダコ)、焼き鳥(ねぎま、つくね)、
う巻き卵、野菜と厚揚げの煮物、貝の和え物、お吸い物、ごはん。
食後にメロンかアイスコーヒーがついて、1580円。

さすが地元、このボリュームでこの値段です。おなかいっぱい。
お造りも煮物も、とても丁寧に作ってあります。飾り切りもきれい。
大きめの焼き鳥の肉は食べごたえ、うまみとも申し分ないおいしさ~

テーブルの横の大きな窓からは、すぐ横に生い茂る緑の樹々が見える。
我々の目から店の姿をすっぽり覆い隠していた(うぐぐ)雑木林。

    昼間見るとなんとなく入り口っぽくなってるのがわかる・・
     でも夜は真っ暗でなにが何やら。

ちょっと車で奥まで来ると、こうやってゆったり、木に囲まれて食事ができるんだなあ。
日頃は灼熱のコンクリートジャングルで暮らす私

(嘘です)にとって、
ちょっとした小旅行にでも来たような、のんびりとした気分にさせてくれる、実にほのぼのとした場所でありました。

それにしても、あの恐怖と徒労の夜は何だったんだ。(=_=)
まあ、苦労してたどり着いた分、喜びも大きいということで。
はは・・(乾笑)

次は日暮れ時から、地鶏の焼き鳥できゅきゅっと呑みたいものです

うな重も絶品だそうで。
でもやっぱり、夜に来るにはちょっと道中が怖いかも・・