居酒屋の星野仙一・その5「君は空を見てるか、風の音を聞いてるか」

February26 [Sun], 2006, 14:50

「居酒屋の星野仙一~ゲスト・小田和正 in 名古屋」
NHK-BS2で2006年1月26日に放送されました。

先週、マックが飛んでデータがすっかり消失したのですが、直近のテキストは、復旧ソフトのおかげで一部復活しました。
また飛んじゃわないうちに、急いでアップ。

放送された内容とまったく同じではありません。

■小田さん「プロ野球はどうなるんすか。」

星野氏「このままじゃあ、終りだね。なにか、何かを変えていかんと。」

小「仙ちゃんがなにするんかなと思って。へへ」

星「俺いろいろ提案してんだけどさあ、もう…なんていうのかなあ…
みんな、変えたくないんだよね。
今のままでいいんだよという部分がある。でも、現実には視聴率も落ちてると。ま、これは東京だけの話なんだけどね。九州も、大阪も、仙台も、北海道も視聴率上がってるんだけどね。
でもやっぱり、東京、首都だし、大事だから。それが落ちたんじゃねー、寂しいからね。」

小「やっぱり、めんどくさいこと背負わなければ、絶対先には進めないよね。」

星「でしょ?」

小「うん。ぜったい。
なんか、辛いなー、ってことがないと、不安だもん。
要するに、簡単に次に進めそうな時は、どうも自分が信用できないんだ。
(星野氏:「へえー…」)ほんと。
こんな簡単にできちゃったんだけど、これでいいのかな?って思って。
なんか苦労を背負わないと、ちゃんとしたもんになってないんじゃないか、っていう」

星「たとえば、どんな苦労?」 

小「いや、なっかなかできなかったとか、音楽でも新しい曲、要するに同じことやっちゃいけないと思うから。新しい曲を覚えて、辛い思いしてでも、なんとか覚えて、それを発表しないといけないんじゃないか、とか。
そういうことがあると、『よし、これをやれば、乗り越えられんじゃないか』と思うんだよね。」

星「でもほら、スポーツ選手は特に年齢だとか、ケガだとか、そういうもので、ユニフォームを脱がざるを得ない、という時が来るわけじゃない。
小田だって、いつかステージを降りなきゃいけない時が、来るわけじゃない。それは、5年先か10年先かわからないけども。
そんな自分を想像したことある?」

小「積極的に想像はしないよね。でも、俺は意外と、そんなさみしくなく終われる気がする。
(ややうつむき加減で)まあね、昔から…ちょっと先生みたいなことは興味があったんだよね。その、先生やって、野球部の顧問やって、野球一生懸命やる、みたいな。

(腕組みをして、ちょっと上を見る)そういう、やっぱり、なんか、若い奴に、強制はしないけど、お前らこんなに楽しいことがあるし、今頑張れば、みたいなことを。自分は子供いないから。そういうことを伝えたい、伝えてやりたいなあ、そういう気持ちはあるね。

みんな、バカなことやってるミュージシャンもいっぱいいるから。ねえ。
あんまりだから押し付けなくて、押し付けてないのに、知らないうちになんか伝わってるみたいな、ことができたらいいなあって思うね。

あと、さっきのプロ野球じゃないけど。さんざん挫折してきたんだけど、音楽、なんかもっと日本の音楽の、環境がいい方へ向かうような、後押しできるような、ことができないかなあっていう。」

星「音楽界っていうのは、閉鎖的、保守的な部分はあるわけ?」

小「いろいろ悪い、閉鎖的だの保守的だの、悪い形容詞みたいのは、どれでもあるよね。どれもあるんじゃない?
どの世界でもそうだと思うよ。
文学界、なんとか界だけは、特別立派な文化を築いてる、ってことはないと
思うんだよね。政治でも。だいたい似たり寄ったりだと思うんだよね。

だからみんな同じような、至らない、倫理観の足りないような。
同じレベルだと思うんだよね。
だから、どっかが、先陣きったら。みんなそこへついてくような。
プロ野球界がすごくいい感じになってる、っつったらそれを見てるから、
文学界なんかも同じように動く、気がするんだけど。

先陣をきる必要はないけども、
その、本来音楽のあり方、目指してくもの、に突き進んでく、潔い、
『君は空を見てるか。風の音を聞いてるか』みたいな。
そんな組織があると、いいなあと思うよね。」

星「うん…日本人て、非常にネガティブに考えるから。
失敗したらどうしよう、とか、俺がひっぱってついてこなかったらどうしよう、とか。
先陣きるのものすごい嫌がるじゃない。石橋を叩いて渡るとかさ。

でも、団塊の世代はね。もう先陣行かなきゃいけない。
(小田さん「そうだね」)つまずこうが、(「そうそう」)落ちようがね。
行かなきゃいけないという。」

小「カッコ悪くてもいいやっていうとこに踏み切るのは、なかなか大変だよね。人間てのは。」

星「ある部分プライドを捨てる勇気、というのをね。持たなくちゃいけない。絶対成功しないし、そこに突き進めないから。」

小「そうなんだよね。それを捨てるところに、とっても素敵な場所が待ってるんだよね。」(優しい笑顔)
星「そうなんだよなー」小「えへへ(笑)」

星「こんな真面目な話したことないもんなー。ははは!(笑)人生論とか、過去を振り返って。」
小「良かったんじゃない?今、そういう話をするのが。」

「ずっと 友だち」に続く。→